一粒の種

人は 一粒の種
土という世界に(いだ)かれ 水という愛情で芽吹き
光という幸福で育ち 風という困難で身を傷め
実りという結果を得る
渇ききった(せかい)では 種は乾涸び
水びたしの(せかい)では 種は朽ちる
足りない(あい)では 種は乾涸び
多すぎる(あい)では 種は朽ちる
弱すぎる(こうふく)では 穂はしおれ
強すぎる(こうふく)では 穂は乾涸びる
弱すぎる(こんなん)では 穂は立たず
強すぎる(こんなん)では 穂は折れる
一粒の種から 一本の穂へ
すべての種が 穂になれるでもなく
すべての穂が 種を残せるでもなく
実を結ぶもの 結べないもの
芽吹くことさえ できなかったもの
それぞれの実り それぞれの結果を向かえ
穂は 大きなうねりとなって 大地を埋め尽くす
幾千幾万の穂が たなびく
幾千幾万の人が 寄り添う
穂が 波を立てる
人が 鼓動を刻む
大地は 生きている
世界は 生きている
すべては 受け継がれていく 命の躍動

2016年9月。平塚での音楽会《ムジーク・レーヴ》にて『カヴァティナ』のピアノ演奏と共に朗読して戴きました。
上演の機会を戴けて、感謝致します。聴いて下さった皆さん、評価して下さった皆さん、ありがとうございました!

2007年3月。群馬県みどり市笠懸小学校《六年生の卒業を祝う会》にて生徒さんの群読に使用して戴きました。
大切な節目の行事に花を添える事が出来て、大変嬉しく思います。拙作を採用して戴いた先生、ありがとうございました!

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